「知る」ことは止められない『know』野﨑まど
#SF #拡張現実 #ボーイミーツガール
- 作者: 野崎まど
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/09/30
- メディア: Kindle版
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SFのジャンルとしては拡張現実モノと言うことになるだろうか。舞台は2081年の日本。超情報化社会となった日本は、人間の処理能力を超えた情報量に適合するため《電子葉》という装置を開発した。電子葉は情報取得と処理を高速化するものだが、パンダの学名を聞かれたとき無意識にネットで検索して結果を得ることが出来る、しかもノータイムで行えるとか、特権を得ていれば人の個人情報まで盗み見ることが出来るとかいろいろと便利でプライバシーもへったくれもないものである。
まあこの物語を通して、情報は自由であるべきだと言われているのでプライバシーの問題についてはあまり触れられていない。それよりはむしろ、「知る」という行為や、「知りたい」という気持ちが進む道を描いている。
いくらSF向けの文体になっているとはいえ、野﨑まどなので相変わらずそこまで説得力はない(※ラノベよりは説明が多い)し、人智を超えた天才も出てくる。それでも今まで読んできた野﨑まどとは違ってああ面白い!と感じたのは、「知る」という身近でかつ興味のあるテーマだったからだと思う。そりゃできることなら何だって知りたいんだよ!という思いは常々あって、そんな私には「原理上何だって知ることが出来る」、「超効率的に理解できる」というガジェット(電子葉など)はとても魅力的だったのだ。
最後の方はテッド・チャンの『理解』の劣化版(おそらくオマージュ)だったり胡散臭さが増してきたりで微妙なところはあったんだけど、全体のテーマは明快だしオチも良く、軽く楽しめる話だった。野﨑まどがまたSFを書いたらぜひ読みたい。