しあの巣

読書やゲームや美術館めぐりなどの日々の記録

『横浜駅SF』イスカリオテの湯葉

#SF #横浜駅
本編26話、増発3話までの感想。
kakuyomu.jp

絶え間ない改築の続く横浜駅がついに自己増殖の能力を獲得し、膨張を開始して数百年後の日本。本州の99%は横浜駅で覆われ、SUICA を所有する人間が住み自動改札による徹底した監視下にあるエキナカの社会と、それ以外の僅かな土地に追いやられた人間の社会に分けられていた。青函トンネルでは、増殖を続ける横浜駅JR北海道との終わりの見えない防衛戦が続いていた。非 SUICA 住民達の住む岬で暮らしていた三島ヒロトは、古代地層から発掘された「18きっぷ」を手に、五日間限定での横浜駅への侵入を果たすが…

 カクヨムのあらすじから引用。出だしの一文から物凄い出落ち臭を感じるのだけど、それだけの話じゃなかった。続きが気になってどんどん読ませてくるタイプの話。
 SFとしてはそこまでガジェット~~って感じでもないし、近未来感はあるようでないような感じなのだけど、横浜駅エキナカをぼんやりと探検していく様がとても良かった。あらすじの通り本州はほとんど横浜駅で覆われているので、他所の県に行くにしてもてくてくと駅構内の通路を通ってゆく。駅構内も多様性があり、傾斜があるところにはエスカレーターやエレベーターが生え、人が集まって暮らすところは横浜駅も多層構造になる。人工物なのになんとなく自然的な部分があって、そこのミスマッチさが不思議な雰囲気を作り出していた。
 多分私はよくわからないところをぼんやり旅する話が好きなんだと思う。自分が読みたいのはどんな小説だろう…と考えたときに、ふとキノの旅が思い浮かんだ。キノの旅とは似ても似つかないけど、「横浜駅SF」もヒロトと一緒にちょっと退廃的なエキナカ空間を歩いていくのが楽しかった。