しあの巣

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速水御舟展 in 山種美術館

#日本画 #南画 #やまと絵
山種美術館で開催中の速水御舟展に行ってきた。

【開館50周年記念特別展】 速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造― - 山種美術館


速水御舟は明治末期〜昭和期に活躍した日本画家。私は日本画のことは殆ど知らず、琳派を「りんぱ」と呼ぶことすらつい先日知ったような有様だがとても楽しめた。

予習にはいつものようにもっと知りたいシリーズ『もっと知りたい速水御舟』を読んでから参戦。ところで今回の展覧会の特徴としては、重要文化財指定の「炎舞」「名樹散椿」の両方が見られるということがあげられる。他の代表作も概ね観ることが出来るので、予習した絵画が目の前にある!!という体験ができる。西洋の有名画家なんかだと大抵予習しても好きな絵は見られないので、今回先に見て気になっていた絵(翠苔緑芝、名樹散椿など)を実際に見られたのはとても幸福だった。

御舟の絵をみて、やはり日本画は馴染み深いなということをつくづく感じさせられた。
ここのところ西洋画ばかり目にしていて、日本画を真面目に見るのは随分久しぶりだった。西洋画は『鑑賞のための西洋美術史入門』を読んだり、ダリやカラヴァッジョの絵を見たりと積極的に知識を得ようとしていた。日本画についてはようやく『もっと知りたい速水御舟』を読んだというところで、日本美術史については全くの無知である。
だけど、日本画は馴染みやすい。西洋画はどうしてもキリスト教の影響が根強く、根底に知識がない私には馴染みにくいところがあるが、日本画は知識がなくとも美しさを感じることが出来る。日本人は昔から花鳥風月を愛でるというけれど、身に染み付いた文化なのだろうか。予備知識が乏しくても、これは美しいものだと率直に感じられた。そういった心を自分が持てることに安心して、絵に心を委ねることができた。いい美術体験ができた。

大正14年〜昭和4年の絵はどれもこれも素晴らしいものばかりだったのだけど、中でも『翠苔緑芝』(すいたいりょくし)が特に好みの一作だった。翠苔緑芝は猫がいる!!ということで猫好きの私は展覧会に行く前から期待していたのだけど、実際に見てみるとその世界観に吸い込まれるようで素晴らしかった。
猫が木の麓に佇んでおり、兎もそれとなく存在するという一見よくわからない絵なんだけれど、見れば見るほど不思議になってくる。まず木が妙に平面的で、立体感がない。デフォルメされて生命感のない世界の中でどこかを睨む猫、こいつがまた可愛い。あまりにかわいいので山種美術館のキャラクターと言わんばかりにお土産屋にたくさんいる。妙ちくりんな世界の中でぼんやりしている猫と兎、そして立体感のない木々がある意味理想形のようで屏風の中に完成された世界を感じた。取っていたメモには「楽園」などと書いてある。そのような美しさを持った一作だった。

好きだった作品は「萌芽」「山科秋」「洛北修学院村」「鍋島の皿に柘榴」「桃花」「墨竹図」「牡丹(大正15)」「樹木」「沙魚図」「木蓮(春園麗華)」「翠苔緑芝」「名樹散椿」「春池温」「暗香」「あけぼの・春の宵」「牡丹花(墨牡丹)」「白芙蓉」「円かなる月」といったところ。多い!
特に好きなのは「翠苔緑芝」「名樹散椿」「暗香」「白芙蓉」か。翠苔緑芝と名樹散椿がツートップ。好きな絵が多く本当に幸せな展覧会だった。