しあの巣

読書やゲームや美術館めぐりなどの日々の記録

死後の世界とミーム『ニルヤの島』柴田勝家

#SF #宗教 #ミーム

技術の発達により人々の観念から「死後の世界」は滅んだとされたが、ミクロネシアの島々では未だ死後の世界への信仰が残っていた―という感じで始まる話。ハヤカワSFコンテストで大賞を受賞した作品だと聞いて読んでみた。
とにかく読みづらかった。世界設定として生体受像(ピオヴィス)なるものにより主観時刻が”意味のある順番に”並び替えされるようになった、ということを本に反映しており、つまり時間軸がバラバラで、その上登場人物が多いので誰が誰だかよくわからなくなる。一気に読むべきだったなあと少し後悔した。登場人物の把握も状況の理解も進まず読むのが苦痛になってきつつあったがラスト100pくらいで一気に物語が展開しはじめ怒涛のクライマックスを迎えてなんだこれ面白いじゃないか!!!という感想に至った。最後まで読めば面白い。
死後の世界がなくなった理由について「記録の集積とコミュニケーションすることを”本人と会える”」と表現していいのか?という疑問や、ミームをいかにして扱っているのかという説明がほとんどされていないことなどちょこちょこ不満点はあるもののミームのゆくさきについての示唆はとても興味深い。次作が楽しみだ。