発狂と策略『リア王』シェイクスピア、安西徹雄訳
#戯曲 #悲劇
- 作者: シェイクスピア
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/12/20
- メディア: Kindle版
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ストーリー自体は老いぼれ王の発狂とそれをとりまく人々の策略、ついでにエドマンドの叛逆の物語、という認識。老王がかなり老いぼれクソジジイで、娘の一人に、
まったくの話、バカな年寄りは、また赤ん坊に返ったも同然。愚かな真似をした時は、おだてるか、それでなきゃ、頭から叱りつけてやらなくちゃ。(p.36)
などと言われていて、リア王が書かれた時代(1604頃)から老人は老人だったのだなあと思った。文字媒体で読んだことでストーリーの構成は分かりやすかったものの、リア王の発狂や道化の演技があまり想像できず、映像で観たいなあセリフを聞きたいなあという思いが強まるばかりだった。悲劇がそこまで好きでないのか、単に文字だから魅力が活きていないのか分からないがそこまで感情移入できず、ぼーっと眺めていたらいつの間にか終わっていた映画のような読後感だった。
映像で見るまでは評価を下し難いのだけど、文章だけで見ればあまり合わなかった。でも芝居がかったセリフ(芝居だから当然だけど)は割と好きな部分も多かった。一番好きだったのは、嵐の中で館からリア王を追い払った冷酷な娘ゴネリルに対しその夫オルバニーが放った、
知恵も美徳も、邪悪な者の目には、ただ邪悪としか見えぬもの。汚れた者の口には、汚れた味しか美味とは感じぬ。(p.149)
という言葉。
関連情報
・シラノ・ド・ベルジュラック
リア王の他に読んだことのある戯曲といえばシラノしかなかったので、基本的にシラノと比較しながら読んでいた。シラノは詩を楽しめるので、文章で読んでも面白い戯曲。
・「ハムレット」(1948)
監督:ローレンス・オリヴィエ。近くのツタヤにリア王がなかったので借りてきた。
・「乱」(1985)
監督:黒澤明。リア王をモチーフにした時代劇とのこと。
奇想天外な短編集『独創短編シリーズ 野﨑まど劇場』野﨑まど
#ライトノベル #短編集
- 作者: 野崎まど,森井しづき
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2012/11/09
- メディア: 文庫
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雰囲気としてはギャグマンガ日和のノリの良い回に似ていて、ページをめくるたびそう来たか!というような展開に思わず笑ってしまう。ただし人は選ぶノリだと思うので、試しに適当な話を読んでみてから読むかどうか決めた方がいいだろう。私は「Gunfight at the Deadman city」、「第60期 王座戦五番勝負 第3局」、「MST48」、「妖精電撃作戦」、「TP対称性の乱れ」が特に好きだ。テーマ自体は西部劇風、将棋、アイドル…と分かりやすい、よくあるテーマが多いんだけどそこから一捻りも二捻りも加えてくるから凄い。野﨑まどのアイディアの素晴らしさが存分に生きた一冊。
Nelson Mandela, by Coleen Degnan-Veness
#多読 #Level2_600headwords
*NELSON MANDELA PGRN2 (Penguin Readers: Level 2)
- 作者: VENESS
- 出版社/メーカー: Pearson ESL
- 発売日: 2001/03/23
- メディア: ペーパーバック
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反アパルトヘイト運動の活動家、南アフリカ共和国元大統領、ノーベル平和賞受賞者のネルソン・マンデラについての伝記。多読教材としてはlevel2にしては少し難しめに感じたが、ノンフィクションはフィクションより大抵難しく感じるのでlevel2のノンフィクションとしては妥当なレベルか。南アの地名・人名が多いのも少し辛い。マンデラについて、ノーベル平和賞を獲って南アフリカの大統領だった、ということしか知らなかったので彼の生涯について簡単に知ることが出来て良かった。
彼は大学で法律学を勉強し、弁護士として仕事をしつつANC(African National Congress)に属し反アパルトヘイト活動を行っていた。アパルトヘイトとは人種隔離政策のことで、白人と黒人の住む場所を分けるなど非白人への差別が行われていた。マンデラはこれに対し武力で抵抗するなどしたが、何度も国家反逆罪として逮捕され、44歳で投獄されてからは27年間も獄中生活を送った。しかし国際社会の非難や国内の声に圧されてアパルトヘイト政策は撤廃され、マンデラも71歳の時に釈放された。釈放後は白人のデクラーク大統領と共に民主化を推進し、1994年には総選挙によってマンデラが大統領に選ばれた。5年の任期を経て政界を引退、2013年に95歳で亡くなった。
弁護士として活動したあたりでガンジーと重ねて見ていたが、マンデラは非暴力主義を貫いた訳ではないということに少し驚いた。この本ではマンデラの思想的・政治的な部分についてはほとんど述べられていなかったので、機会があれば読んでみたい。
「ハーモニー」映画版
- 出版社/メーカー: 大誠社
- 発売日: 2015/11/13
- メディア: 大型本
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原作は既読。原作の上澄みを掬って薄めて最後に百合をポイッと付け足したような酷い映画化だった。良かったところは沢城みゆきさんのトァン等声優陣の演技、あとは大抵ひどい。原作のセリフをそのままキャラに喋らせているからセリフばかりになるのは百歩譲るとしても、その間無駄にレストランが回転するとかトァンが回転するとかやたら回転ばかりして時間稼ぎのように見えるし、全体として映像としての魅力に乏しい。どうしても観たい人はレンタル落ちしてからお菓子でも齧りながら見るのが吉かと思う。
卒論は一通り終わった
11月振り返りと12月の目標をまとめる。タイトル通り卒論は一通り終わったのでなんとかなりそう。あとは単位を取るだけ
11月に読んだ本
- 本:恋文の技術/ヨハネスブルグの天使たち/図書館戦争/あなたの人生の物語/なれる!SE1/なれる!SE2/ちいさな王子/時間的無限大
- 漫画:黒執事22/新世紀エヴァンゲリオン1-14
ノンフィクションがない…。毎日『日本人の英語』をカバンには入れているものの一向に読もうとしないのでどうにか自分に読ませるための方法を考えねばならないなあ。
それはともかく、特に面白かったやつをさっくり紹介。
何故今までタイトル知っていながら読んでいなかったのか!この臭そうな表紙なのか、いまいちよくわからないタイトルなのか、それとも色々なところでオススメとして紹介されているが故に手を出しづらかったのか?それはともかく、これはSFが好きな人なら絶対に読むべき短編集。
何が素晴らしかったって、SF的論理の貫き方が良い。とても良い。ファンタジックなキリスト教的世界観だったり歴史改変物だったりファーストコンタクト物をやってみたりドキュメンタリーチックに仕上げてみたりと舞台設定のバリエーションは様々なのだが、それのすべてにきちんとした論理展開がなされている。すごい。あと構成うまくて読み終わった後にああ、って腑に落ちたりもう一度読ませて!って気分になったりする。しかもアイディアが輝いていて、テッド・チャンはそんなことを思いつくのか!と関心するばかりである。いやもうすごい。読んでいて楽しい。
kindleで 1冊50円、14巻まで全部合わせて700円という激安価格になっていたので思わず購入した。アニメや映画をつまみ食いした程度の知識しかなかったが、漫画はよくまとまっていてとても読みやすかった。アニメや映画であったような視聴者を煙に巻いた言葉の断片はなく、登場人物(特にゲンドウ)が大事なポイントで大事なことを喋ってくれるので分かりやすい。逆に言えば考察の余地は少ないのだが、私のようなライトユーザーにはこれで十分だと感じた。オチは異なるものの、アニメを見ていない人が一般常識的にストーリーを抑えるのにも役立つと思う。
・アニメ
蒼穹のファフナー、RIGHT OF LEFT、HEAVEN AND EARTHを見た。前半はふーんって感じだったけれど後半からどんどんおもしろくなってきた。ファーストコンタクトもの、と言われると腑に落ちる。島の人々、特に大人がまっすぐで、大切なものを本当に大切に思っているのが分かってくるとああ尊いなあと感じてよい。
11月の反省
土日になるとくたばってうまく活動できないので活動可能な状態にしたい。せめてminecraftでもいいから活動を。
あとノンフィクションをもっと読みたい。
12月に読みたい本
ハーモニーは既読なんだけど映画見る予定なので再読しておきたい。ガリバー旅行記はディストピアものらしいと聞いたのと、童話以外の文脈でも名前を聞く作品なので読んでおきたい。購入して積んでるので進めていく。リア王は読みたい本リストから。宇宙物の新書は特に決まっていないので新書ではないがNEWTONorブルバにしようかなと思っている。オススメがあれば教えてもらいたい。あとは積読消化。
12月の目標
java本1周、ウォーキング、掃除
猫氏は毎日猫缶をもらい元気になってきた。今年も残り1ヶ月がんばるぞい。
Walkabout, by James Vance Marshall
#多読 #Level2_600headwords
Penguin Readers: Level 2 WALKABOUT (Penguin Readers (Graded Readers))
- 作者: James Vance Marshall
- 出版社/メーカー: Pearson Japan
- 発売日: 2008/05/08
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8,436/79,729
アメリカからオーストラリアに向かっていた飛行機が事故でオーストラリアの荒れ地に墜落した。生き残った姉弟が荒れ地を彷徨っていると、walkabout(通過儀礼的な放浪生活)のために1人で生活していたアボリジニの男の子に偶然出会い…という物語。
この物語は1959年に出版された。1955年にモンゴメリーバス・ボイコット事件が起こったそうなので公民権運動が始まったばかりの時期だろうか。その頃の話なので、姉のMaryは黒人のアボリジニが怖くて近寄ろうとしなかったりコミュニケーションしなかったりと強硬な態度を取っている(が、飯はちゃっかりもらっている)。対する弟はまだ小さく差別の観念もないため、言葉は通じないながらも少年との仲を深めていきながら荒れ地を放浪する話。
Maryてめえ食わせてもらっておいてその態度はないだろと思うものの、当時の白人が黒人に抱いていたイメージを垣間見たような気がする。読後感は悪かった。
ブラック企業とツンデレ上司『なれる!SE―2週間でわかる?SE入門』夏海公司
#ライトノベル #SE
- 作者: 夏海公司,Ixy
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 文庫
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薦められたので読みました第2弾。薦めてくれた人は「SEの父にこれを読ませたら大体合ってるとか言ってた」と話してくれた。
これは就活がうまくいかず、就活サイトに載っていた「SE頑張り物語」的な話を信じて文系だけどIT企業に就職した主人公・桜坂工兵が苦しみながらもなんとかやっていく話だ。「なれる!SE」というよりは「ならないとクビ!SE」である。
外見年齢中学生くらいの可愛くて技術力の高いツンデレ上司なんてものは現実のどこにもいないし、謎の美人事務員さんもそうそういないだろうけど、その他の設定はラノベレーベルから出ている割には現実的で、過剰な装飾はあまりなかった。この話の良いところはそこで、主人公はコピーすらロクに取れないし、仕事を手取り足取り教えてくれないことに対して怒りを感じ、理不尽な上司には謝りたくないなあ嫌だなあと思っていて、人間くさい。「文系で技術力がない」という設定はブレず技術的な仕事は全然できないのだが、どうにか自分にも出来ることを見つけたり、考えたりして必死に仕事をやっていく様を見るのは良いものだった。
もし現実にこんな友人がいれば「それ今すぐ辞めるか技術力だけ得てさっさと転職した方がいいよ」とアドバイスすると思う。環境は劣悪だけど周りの人間には良い人が多くて辞めづらい/辞めない判断をする、というのはどこにでもある話で、そういうところまで何となくリアルだった。